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演者 | 野田 哲生(公益財団法人がん研究会 がん研究所 所長) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階講堂 |
日時 | 平成27年6月10日(水) 16:00 ~ 17:30 |
世話人 | 田中 啓二 所長 |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
20世紀のがん研究により、がんの分子機構が次々と明らかになり、その成果をもとに開発された分子標的薬が、実際にヒトがんの治療に高い有効性を示したことは、がんの基礎研究者が積み重ねた知見が正しいことを証明するものであった。その結果、今や、がんの治療薬は分子標的薬の時代を迎えている。しかし、多くのがん分子標的薬の中に、日本発の治療薬は少なく、世界的に見ても、がんの分子標的薬時代の幕開けとなったチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の有効性を再現するような新規分子標的薬が、なかなかがん患者さんの手元に届いていないという懸念を持つ研究者がいることも事実である。現在、国内のアカデミアにおけるがん研究では、こうした懸念を打ち消し、さらに有効な分子標的薬開発を加速させるための取り組みが求められている。
文部科学省では、新たながん研究事業として、平成23年から次世代がん研究シーズ戦略的育成プロジェクト(P-DIRECT)が開始しているが。本プロジェクトでは、「アカデミアにおける基礎的がん研究から生まれる萌芽的シーズを、製薬・医療機器企業に受け渡すことが出来るレベルまでに、効果的かつ速やかに育成することが出来る新たな研究システム」を確立するとともに、質の高い逆橋渡し研究(リバースTR)を推進するため、臨床情報や患者由来の検体の解析により得られる情報を基盤とした基礎研究を推進することが唱われている。
本プロジェクトは、本年4月よりA-MEDのもとで強力に推進されているが、本講演においては、この「次世代がんプロジェクト」が目指すものについて概説し、新たな医療イノベーションの流れの中で、がんの基礎研究に実績を持つ日本の強みを生かした、新たな次世代がん創薬の仕組みの構築について考えてみたい。