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平成27年度 医学研セミナー

シナプス伝達調節と神経回路発達における逆行性シグナルの役割

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演者 狩野 方伸(東京大学大学院 医学系研究科・神経生理学分野 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成27年8月10日(月) 15:00 ~ 16:00
世話人 齊藤 実 基盤技術研究センター長(学習記憶プロジェクト)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

脳のシナプスの大半をしめる化学シナプスでは、シナプス前終末から放出される神経伝達物質を介して、シナプス前部から後部へ、「順行性」情報伝達が行われている。一方、シナプス前部から供給される伝達物質の量が適正であるかどうかをシナプス後部で感知し、シナプス後部から前部へ向けて、「逆行性」情報伝達が行われることが示唆されていた。私たちは、2001年に内因性カンナビノイド(体内に存在するマリファナ類似物質)がシナプス後部から活動依存的に放出され、シナプス前部のカンナビノイド受容体に作用して、伝達物質放出を抑圧することを報告した。引き続きそのメカニスムの解明を進め、内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達修飾が神経系における普遍的なシナプス伝達調節の仕組みであることを示した。

一方、生後発達期の神経系においては、出生直後にみられる過剰なシナプス結合のうちで、必要なシナプス結合は強化され、不要なシナプス結合は除去されて、環境に適するように神経回路が最適化されることが知られている。この過程において、シナプス後部から前部への逆行性シグナルが重要な働きをしていると考えられる。私たちは、生後発達期の小脳でみられる、登上線維-プルキンエ細胞のシナプスの刈り込みのメカニズムを研究する過程で、複数種のセマフォリンがプルキンエ細胞から登上線維へ逆行性シグナルを伝えることを明らかにした。今回の講演では、内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達修飾と、生後発達期小脳のシナプス刈り込みにおける逆行性シグナルの役割について、私たちの研究成果を紹介させていただく。

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