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平成27年度 医学研セミナー

細胞内分子クラウディング環境で安定化するDNAの非標準構造

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演者 三好 大輔(甲南大学フロンティアサイエンス学部生命化学科 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成27年5月8日(金) 15:00 ~ 16:00
世話人 正井久雄 副所長(ゲノム動態プロジェクト)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

生命の進化において環境は決定的に重要である。生体分子も存在する分子環境で機能を発現するために進化してきた。生体分子が存在する細胞内は、生化学的実験が遂行されてきた試験管内とは全く異なる分子環境にある。その最たる例が分子濃度である。細胞内の生体分子は、400 g/Lに達し、細胞内空間の約40%を占有する。この値は、ダイヤモンド結晶構造の充填率を超える。すなわち細胞内は、生体分子が非常に混み合った分子クラウディング状態にある。一方、試験管内実験では、生体分子の濃度を極力低くして夾雑物を排除する。得られた結果は、希薄溶液中での生体分子の知見となり、これが細胞内の生体分子の物性と全く異なる可能性がある。

そこで我々は、合成高分子や天然の浸透圧調節分子を用いて分子クラウディング環境を構築し、その環境下で核酸の構造と熱力学的安定性を検討してきた(1)。その結果、分子クラウディング環境では、核酸の非標準構造である二重らせん構造が不安定化することがわかった。これとは逆に、核酸の非標準構造は分子クラウディングで顕著に安定化することが示された(図1)。本発表では、細胞内で重要な役割を果たす四重らせん構造を中心とする核酸の構造多様性、ならびに四重らせん構造とリガンドの結合に及ぼす分子クラウディング効果について述べる。また、細胞内で形成される可能性がある核酸の非標準構造の生物学的役割も議論したい。

(1) Chem. Rev. 114, 2733-2758 (2014).

Fig. 1 Schematic DNA structures under dilute and molecular crowding conditions

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