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平成29年度
医学研セミナー

多発性硬化症の病態多様性とヘルパーT細胞

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 大木 伸司
国立精神・神経医療研究センター神経研究所 免疫研究部(室長)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成30年3月7日(水)16:00~
世話人 佐久間 啓 (こどもの脳プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)は、脱髄を主徴とする中枢神経系の自己免疫疾患である。MSの病態は多様であり、最も一般的な再発寛解型MSの病態解明や治療薬開発が進む一方で、神経変性を伴う難治性の進行型MSは、有効な治療法がないアンメットメディカルニーズとなっている。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、MSの動物モデルとして創薬研究に大きく貢献してきたが、MS病態の免疫学的側面のみがクローズアップされることから、包括的なMS病態の解析における有用性については賛否両論がある。私たちはEAEを、MSの治療に役立つ情報を効率的に得るための最重要ツールの一つと考えており、ヒトのMSとEAEの解析を並行して進めることで、中枢神経系で実際に起きているMSの自己免疫病態の分子機序の解明を目指している。

多様な病態スペクトラムを形成するMSの精密医療を実現するために、私たちは免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞の機能に着目し、動物モデルを併用した解析を進めてきた。最近になって、再発寛解型MSと進行型MSの病態に、NR4A2とEomesという2つの分子に依存するユニークなヘルパーT細胞がそれぞれ関与することがわかってきた。Th17細胞を中心とした自己免疫研究とは一線を画し、EAEマウスおよびMS患者の中枢神経系で、病態形成に関わるこれらの真の病原性ヘルパーT細胞の役割と、多様なMS病態への治療応用可能性についてご紹介したい。

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