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平成29年度
医学研セミナー

超解像度顕微鏡とリン酸化プロテオミクスによる神経成長・再生機構の解析

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演者 五十嵐 道弘
新潟大学大学院 医師学総合研究科 分子細胞機能学分野 教授 教授
会場 東京都医学総合研究所 2階 講堂
日時 平成29年5月25日(木)16:00~
世話人 三五 一憲 (運動・感覚システム研究分野 糖尿病性神経障害プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

シナプス形成による回路形成を担うのは、神経の成長時に軸索先端に生ずる、成長円錐という運動性に富んだ構造体である。成熟脳で生ずる可塑性・損傷後の回路再編も、同様に成長円錐が関係する。すでに発見後に1世紀以上の歴史を経ているが、成長円錐の成長の機構はよく理解されておらず、回路形成・再編過程の最大のブラックボックスといえる。

演者は成長円錐の研究にプロテオミクスを導入し、成長円錐のマーカーとなる役割の分子群を見出した(PNAS 2009)。このような方法論で、従来注目されていない分子群に着目することが出来た。例えば、機能未知の分子GPM6aは、脂質ラフトに集積して軸索の決定を最適化することを証明した(J Neurosci 2017)。このような分子情報を元に、以下の検討を行った。

1) 膜小胞は細胞骨格と並び、成長円錐の動態を支える二大要素であるが、動的な役割はほとんどわかっていない。演者はプロテオミクスで見出された小胞分子を標識し、超解像度顕微鏡(SIM)でその動態を解析して、これまで言われていたクラスリン依存性エンドサイトーシスとは全く分子機構も空間的部位も異なる部位で起こっていることを証明した(Cell Rep 2017)。 2) 成長円錐のリン酸化シグナリングを包括的に理解するために、リン酸化プロテオミクスを導入した。成長円錐のリン酸化は顕著にプロリン志向性のリン酸化頻度が高く、脊椎動物に特徴的なリン酸化が多数検出された。リン酸化抗体等の作成から、新たな神経成長・軸索再生のマーカーとなりうるリン酸化を発見した。
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