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平成29年度
医学研セミナー

睡眠・覚醒調節や中枢体内時計の神経メカニズム

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演者 三枝理博(みえだ みちひろ) (金沢大学 医薬保健研究域医学系 統合神経生理学 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階 講堂
日時 平成29年8月9日(水)16:00 ~ 17:00
世話人 原田高幸 参事研究員 (運動・感覚システム研究分野 分野長 視覚病態プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

脳には睡眠システムと覚醒システムが存在しており,適切なタイミングで両者が切り替わる。このスイッチの制御に重要なのがオレキシンである。オレキシンは神経ペプチドで、オレキシン産生ニューロンの変性・脱落によりナルコレプシーが発症する。これは、不適切なタイミングで睡眠と覚醒の切り替えが起こる睡眠障害である。特徴的な症状に、覚醒が長く維持できずノンレム睡眠が病的に出現したもの(睡眠発作)と、筋緊張低下などレム睡眠関連の機構が覚醒中に異常なタイミングで出現したもの(情動脱力発作)がある。我々は、オレキシンニューロンの下流で睡眠・覚醒を制御する神経回路を明らかにするために、ナルコレプシーモデルマウスにおいてニューロンタイプ特異的な遺伝子レスキューや神経活動操作などの実験を行った。その結果、前述のナルコレプシーに特徴的な二つの症状は、異なる神経メカニズムを介してオレキシンニューロンにより抑制されることが明らかになった。

睡眠・覚醒はまた、概日リズムによる調節も受ける。我々の行動や生理機能の殆どが概日リズムにより調節されるため、その変調により不眠、肥満や気分障害等、様々な健康障害・疾患リスクが増大する。哺乳類では、視床下部の視交叉上核が中枢体内時計として機能し、概日リズムを発振する。視交叉上核による概日リズム発振には、多種・多数の時計ニューロンから成る神経ネットワークが必要であるが、各細胞内の概日時計分子機構がほぼ明らかになった一方で、神経回路レベルでの動作原理は殆ど明らかになっていない。我々は、視交叉上核神経ネットワークにおいて、ニューロンタイプ特異的な遺伝子操作や神経活動操作を加え、中枢概日時計の神経メカニズムを理解することを目指している。これまでの研究から、従来の見解を覆し、視交叉上核のバソプレシンニューロンが概日リズムの発振や周期決定に極めて重要な役割を果たしていることを見出した。

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