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演者 |
上口 裕之 理化学研究所 脳科学総合研究センター 神経成長機構研究チーム(シニアチームリーダー) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階 講堂 |
日時 | 平成29年6月28日(水)16:30~17:30 |
世話人 | 原田 高幸 (運動・感覚システム研究分野 分野長 視覚病態プロジェクトリーダー) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
神経回路の構築過程において、神経細胞から伸びる軸索突起の先端部(成長円錐)は、細胞外環境のガイダンス情報を統合して移動経路を選択し、適切な標的へ到達してシナプスを形成する。このプロセスを軸索ガイダンスと呼ぶ。成長円錐の進行方向を制御する細胞外分子群には、成長円錐を引き寄せる誘引性ガイダンス分子と、成長円錐をはねのける反発性ガイダンス分子が存在する。誘引性/反発性いずれのガイダンス分子も、細胞質カルシウムイオンや環状ヌクレオチドなどのセカンドメッセンジャーを介して膜動態を非対称化し、成長円錐の両方向性の旋回を駆動する(文献1, 2)。
1980年代からの国内外の研究により、軸索ガイダンスを担う多くのタンパク質分子が発見され、神経回路形成の仕組みの一端が明らかになってきた。しかし、遺伝子がコードする限られた数の軸索ガイダンス分子だけでは、複雑かつ精巧な神経回路の構築を説明することは到底不可能であり、生体には軸索ガイダンスの多様性を生み出しその多様性を制御する仕組みが備わっているはずである。本講演では、軸索ガイダンス分子として機能する新たな脂質を紹介し、タンパク質の働きでは説明不可能な回路形成の仕組みを議論する(文献3)。さらに、成長円錐が自らの細胞内膜動態を制御して同一のガイダンス分子に対する旋回応答性を切り替える仕組みを紹介する。以上、新規ガイダンス分子の発見から細胞内シグナルと駆動機構の解明にいたる最近の研究成果を中心に、神経発生段階での回路形成の基本原理を概説する。