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平成29年度
医学研セミナー

痛みを手がかりとした負情動記憶制御の神経回路メカニズム

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演者 渡部 文子
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床医学研究所 (教授)
会場 東京都医学総合研究所 2BC会議室
日時 平成29年12月18日(月)16:00~19:00
世話人 齊藤 実 (学習記憶プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

痛みは無条件に負の情動を誘発することで、我々の身に危険が迫っていることを知らせる大切な「警告信号」として機能する。一方で、様々な疾患に伴う負情動制御の破綻は、我々の生活の質を大きく損なう。しかしながら、そもそも痛みがなぜ苦痛か、すなわち、痛みがなぜ無条件に負情動へと直結するのか、についての神経回路メカニズムは未だよくわかっていない。そこで、我々はこのような痛みや恐怖による負情動の神経回路に着目した。

情動依存的学習として知られる恐怖条件付けにおいては、条件刺激と無条件刺激の連合の座として、扁桃体が知られ、特に扁桃体外側核における感覚入力の連合メカニズムが研究されてきた。一方、無条件刺激として用いられる痛み侵害受容信号は、橋の腕傍核を介して扁桃体の中心核へと直接入力し、この投射を受ける扁桃体中心核外包部は侵害受容性扁桃体とも呼ばれる。我々は、薬理学的、光遺伝学的、光電気生理学的な解析により、腕傍核から侵害受容扁桃体への直接回路が、無条件刺激の代替信号として機能し、人工的な恐怖記憶を作ることを見出した。さらにY字型迷路を用いて直接回路が忌避信号として機能することも見出した。一方、直接経路は慢性疼痛成立後や恐怖記憶形成後に顕著なシナプス可塑性を示すことも見出した。本日の講演では、このような腕傍核からの直接経路が痛み情動回路において担う役割について最新の知見を含めて紹介する。

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