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平成29年度
医学研セミナー

大規模配列解析が明らかにする哺乳類ゲノムに内在化したウイルス由来の配列の機能・疾患と進化

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演者 中川 草
東海大学 医学部 基礎医学系分子生命科学 情報医学生物学研究室 (助教)
会場 東京都医学総合研究所 2階BC会議室
日時 平成29年6月15日(木)16:00~17:00
世話人 大保木 啓介 (ゲノム医科学研究分野 分子医療プロジェクト (駒込分室))
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

ヒトを含めた哺乳類のゲノム配列の約1割はトランスポゾンの一種のウイルス由来の塩基配列(endogenous viral element, EVE)である。EVEはウイルス(主にレトロウイルス、endogenous retrovirus, ERVと呼ばれる)のゲノム配列が生殖細胞に感染することによって宿主ゲノムに内在化したことに由来する。EVEは塩基置換や挿入・欠失が起き、かつエピジェネティックな発現抑制により、宿主内では機能を欠失し進化的に保存されていないことが多い。しかし、一部のEVEに由来する配列が宿主の中で新たな機能を獲得し、胎盤、表皮や筋肉の発生、細胞分化(特に初期の発生過程)、ウイルス感染の防御や神経性疾患などに関与することが報告されている。一方で、このように宿主で機能を獲得したEVE由来の遺伝子も進化的に保存されていないことが多い。そのため宿主内で機能するEVEは塩基/アミノ酸配列の配列類似度に基づいた解析のみで発見することは極めて困難である。

私たちは、EVE由来のORF(Open Reading Frame)を網羅的に収集したデータベースを作成し公開している( gEVE, http://geve.med.u-tokai.ac.jp , Nakagawa and Takahashi, Database, 2016)。gEVEデータベースはヒトを含めた哺乳類19種のゲノム配列を対象に、EVEの機能モチーフ、配列、位置、分類や機能アノテーションなどに関する情報を公開している。gEVEデータベースを活用し、次世代シーケンサーで解読した大量転写配列と合わせて解析することで様々な細胞・臓器で機能するEVE由来の遺伝子を探索できる。今回は、gEVEデータベースの作成手法やその活用方法以外にも、幅広くEVEに関する研究について紹介したい。

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